独学で不動産鑑定士試験に合格するために必要な要素

前置き

 当ブログでは、独学で不動産鑑定試験に合格することをコンセプトとしています。しかし一部では、「不動産鑑定試験は独学で突破できる試験ではない」「むやみに独学を勧めて時間を無駄に過ごす人間を増やすな」という意見もあるようです。

 私は基本的に、不動産鑑定試験は独学での合格が可能な試験であると考えています。ただし独学で合格するためには下記のような、いくつかの前提条件が必要となります。

1.テキストでの理解が可能である。

 独学で学習を進める場合、媒体としてはテキストの読み込みが中心となります。中古DVD等の映像媒体を購入する場合はこの限りではありませんが、それでも予備校で生の講義を受け、対面での質問が可能である場合に比べるとテキストへの依存度が高まる点は否めません。

 ある程度受験勉強に慣れている方、あるいは読書が趣味という方にとって、テキストを読み込む作業はそれほど苦痛ではないはずです。しかし不動産鑑定士試験には別業界から一念発起でチャレンジする方が多数います。そもそも文章を読む習慣自体が無かった方は、対面講義や動画視聴の方がより効率的に理解を深めることが可能かもしれません。

 端的にいうと「文章を読むことがそもそも苦痛」という方に独学は適していません。ただし難解な文章を精読するという行為は、論文試験はもとより実務においてはリタイアまで毎日繰り返す行為となります。文章と向き合うことに苦手意識のある方が「専門職業家としての不動産鑑定士」を目指すことについては再度検討する必要があると思います。意地悪ではなく本気で言っています。

 不動産鑑定試験に独学で挑戦する場合、ある程度難解な文章を読むことが苦にならないことは欠かせない前提条件となります。

 

2.自律型の学習が可能である。

 予備校を受講する場合、基本的には講義と答練がコンスタントに配信・配布され、学習におけるペースメーカー的な役割を果たしてくれます。大手予備校の合格体験記で語られるように、予備校のカリキュラムに沿って復習を繰り返していけば、それだけである程度の実力をつけることが可能です。

 独学で学習を進める場合、これらのスケジュールを立て、自力でタスクを完了していくという、ある種の自己管理能力が必要となります。私は受験期間中、年間のタスク・月間のタスク・週間のタスク・日別のタスクを全てExcelに落とし込み、自己フィードバックを繰り返して学習を進めていました。

 不動産鑑定士試験の受験勉強は長丁場です。自信で計画を立て遂行していくスキルもまた、独学で不動産鑑定試験に合格するにあたって必須のスキルといえます。

3.情報収集・取捨選択が可能である。

 不動産鑑定士試験は相対評価の試験です。すなわちこの試験で合格層に入るためには、基礎的な知識技能だけでなく、他の受験生が得点する問題とそうでない問題を見極める、ある種のヤマ感が問われます。そして他の受験生が得点する問題というのは結局のところ、講義・テキスト・答練で扱われた、あるいは出題された問題ということになります。そういった情報を仕入れるためには、周囲に不動産鑑定士試験受験生の多い環境、またはSNS等で情報を収集する能力が必要となります。

 この面で、独学で試験に臨む場合でも予備校の模試だけは受験しておくことをお勧めします。特に受験生母数の多いTACの模試で出題された問題は本試験において他の多くの受験生が得点してくる分野となるため、よく復習しておく必要があります。(ただし模試で出題された問題が本試験で出題されないことはざらにあります。)

 一方で、受験生の間では信憑性を欠く噂や不安を煽るような情報が流布しやすいことも事実です。極力合理的に情報を取捨選択しつつ信じた道を突き進むという、ある種の胆力・図太さも時には必要です。

まとめ

 以上で述べたように、不動産鑑定士試験は自律型の学習に慣れた方であれば独学で突破することが可能な試験です。勘の良い方はお気づきかもしれませんが、上記で述べた1.〜3.は独学受験生固有に求められる能力ではなく、受験生として、そして実務家として生涯求められるスキルとなります。結局のところ、予備校はそのいくつかをある程度有償で担ってくれるに過ぎません。

 予備校には膨大なノウハウの蓄積と整備された学習環境があり、有利な条件が整っています。ただしその分受講料は高額であり、金銭面を理由に不動産鑑定士試験受験を断念するのはあまりにもったいない話だと思います。時は金なりという言葉があります。効率をお金で買うか、独学という難しくも濃い学習の道を進むか、決めるのはあなた次第です。